「青は藍より出て藍より青し」#001
このメルマガでは、細川出飯社の代表である細川芙美がひとりの人間として、女性として、この時代を生きる者として、何を見て、どう感じ考えて、自分に取り込んだり、他者へ表現したりしながら、“食”のもつチカラと“食”がもつポテンシャルを信じて止まない、内に秘めたる野望や葛藤を記していきます。
4月号
「2年ぶり、6度目の新シリーズ弁当を販売します」
淡いピンクに雨が染み込み、春がまだ寒さの中にある今年。新しい季節を感じることが少し難しいように思える4月ですが、皆様の食卓には何がならんでおりますでしょうか?細川出飯社では、この春、日々さまざまな場所で食事を必要とする皆様にとって、より利用しやすい弁当屋でありたいと思い、手に取りやすい価格帯の弁当を新たに販売することにしました。その名も・・・
「トルツメ弁当」1250円(税別) コンセプトは、日常茶飯のシンプルなお弁当
近年断続的に食材や公共料金が値上げとなる環境で、私たちはどのように振るまうべきかをずっと考えていました。単に、食材の価格が上がる分をそのまま販売価格に反映することに、やや抵抗感を抱いたからです。日頃からクリエイティブなお仕事に携わる皆様に選んでいただこうと思っている私たちが、右から左へ流すような作業(値上げ)をしてしまうのは、お付き合いする身としてふさわしくないように思っています。いち弁当屋ではあるものの、僭越ながら私たちの創意工夫や趣向を凝らすことが、皆さまの作品づくりに微力ながらも力になれることができればなんて考えている今日この頃です。
今回考案した「トルツメ弁当」は、校正用語からインスピレーションを得て、あってもいいけどなくてもいいものをトル、本当に必要なものだけをツメ。「シンプルであること」にフォーカスしました。
お弁当を「お米を食べるための食事」として定義してから、おかずを校閲していくと、“香の物”の偉大さに改めて気づきました。というのも、白米だけだと味感が単調で間伸びしてしまうため、3分つきの米ブレンドしたり、見た目の色、すこしの食感と香りを加えたりして、お米だけでお米を楽しんでもらおうという意図があります。
この一箱で表現しているのは、食事のベースとなるお米、そしておかずが、もちつもたれつのような味の駆け引きだけじゃなく、お米と“香の物”で十分に美味しさを実感してもらうということです。これが今回、お米を食べるための食事の核心となります。
私たちが普段行う調理工程には、「切る・焼く・煮る…炒る・炙る・和える」などがありますが、これらをどのタイミングで行うかどうか、私たちなりのクリエイティブを落とし込んだ手間をかけていきます。胡麻はごま油で炒り、よりごまらしく。鶏肉は1晩麹でつけた後に、醤油を含ませ炙ります。シンプルを考えることこそが、料理人が忘れてはならない手仕事を追求しているように思います。美味しくするために、足して足して足して、もちろんそれは美味しくなることには間違いありませんが、美味しさに気づくために引いて引いてちょっと足して・・・
空を覆う満開の桜の美しさとは別に、足元に咲いているたんぽぽもまた美しく思う、「トルツメ弁当」できあがったそんな春です。
ビジネスをする以上、動かせる予算、動かせない予算、その間で戦い続けるなら、私たちはどのシュチュエーションでもフィットする食事を提供したい。美味しい1食を作りあげる方程式は、イコールのその先に柔軟性と奥行きをもたせ、変化する時代と共に常に変わり続けることを探求していく私たちの信念を解として導いてくれます。
細川芙美